プッシャー 【pusher】 <俗> ケツペラ |
人力飛行機にはプロペラがコックピットよりも後ろについている機体がいくつか見られます。これが「プッシャー」といわれる推進方式で、機体のお尻にプロペラがついているため俗に「ケツペラ」と呼ばれます。この方式だと、プロペラで発生する空気の流れが翼に影響しにくいというメリットがあります。また、コックピットのすぐ後ろ、機体の中間あたりにプロペラが付いているものは「中ペラ」と呼ばれたりもします。これらに対し、プロペラがコックピットの前に付いているものは「前ペラ」もしくは「トラクター(牽引式)」と呼ばれます。 |
▲ケツペラ |
▲中ペラ |
プッシュプル方式 【push-pull】 |
機体の最前部と最後部の2箇所にプロペラが付いた機体。鉄道では機関車を先頭と最後尾の両方に連結する方式を差す言葉としてよく利用されますが、飛行機では極めて珍しい形式です。プロペラが2基ありますが、後述の双発機とは明確に区別されます。
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ぶいじびよく 【V字尾翼】
名前の通り、2枚の尾翼をV字になるよう斜めに立てた機体で、V字尾翼が水平尾翼と垂直尾翼両方の役割を兼ね備えています。通常の水平尾翼を左右で1枚づつと考えれば、V字尾翼にすれば尾翼を3枚から2枚に減らすことになり、空気抵抗を低減するのに効果があると言われています。 |
せんびよくき(カナード) 【先尾翼機(canard)】 |
通常、「尾」翼と言われるだけあって尾翼は機体の後ろについていますが、これがコックピットの前、飛行機の先頭についているタイプを「先尾翼」または「カナード」と呼びます。失速しにくかったり、機体を小型にできるメリットがある他、鳥人間コンテストにおいてはプラットホームからの飛び出し時に尾翼を引っかけて破損するリスクを減らせます。映画「スカイクロラ」の中ではこのようなタイプの戦闘機がいくつか登場するほか、後述の「おねがい☆ティーチャー」に登場する飛行機は典型的なケツペラ・先尾翼機です。 |
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むびよくき 【無尾翼機】 |
尾翼は機体を安定させたり舵を切ったり、非常に重要な役割を果たしますが、同時に空気抵抗にもなります。そこで、無尾翼機は主翼に工夫をして尾翼の役割を持たせ、水平尾翼もしくは全尾翼を廃しています。滑空機にいくつか見られる形式です。 |
ふくようき 【複葉機】 |
主翼が上下2段になっている飛行機のことで、1枚当たりの翼面積を減らせるため、強度の弱い素材でも揚力(浮き上がるための力)を得やすいというメリットがあります。ライト兄弟の飛行機や第一次大戦時の戦闘機ではおなじみの形式ですが、現代では一部の曲芸飛行機などに残るのみです。鳥人間チームの中には少数ながらこの形式で制作しているところもあります。 |
タンデムよくき 【-翼機】 |
主翼が進行方向に並んで前後2枚取り付けてある機体のことを指し、その容姿から「トンボ型飛行機」「串型機」とも呼ばれます。主翼が2枚あるものの、その取り付け方から前述の「複葉機」とは明確に区別されます。広い翼面積を確保でき、安定性が増すと考えられていましたが、同じ設計思想の場合、前述の「複葉機」や「先尾翼機」の方が有利であることが実証されたため、現在ではほとんど見かけることができません。 |
そうどうき 【双胴機】 |
胴体(人力飛行機の場合胴体パイプ)が並行して2本ある形式。そのため、一般的には垂直尾翼が2つあり、その間の橋渡しをするように水平尾翼が取り付けられます。胴体の強度を上げるには有効な方法と言われており、後述の「魔女の宅急便」に出てくる機体も双胴機です。 |
そうはつき 【双発機】 |
通常、人力プロペラ機はプロペラがコックピットの前もしくは後ろに1基付いている「単発機」という形式ですが、少数ながら左右の主翼に1基ずつ、合計2基のプロペラが付いている機体もあります。これを「双発機」と呼びます。
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にじゅうはんてんプロペラ 【二重反転−】
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プロペラが進行方向に近接して2基並んでいて、2つのプロペラがそれぞれ逆に回転する仕組みのことを指し、「コントラペラ」とも呼ばれます。この仕組みにより、前のプロペラで生じる空気の流れの偏向を後のプロペラで相殺できるため、プロペラの効率を上げることができると考えられており、高速で飛ぶ必要のある爆撃機や輸送機で採用されることがしばしばありました。人力飛行機では相対的に機体重量が増え、仕組みも複雑になるというデメリットがあるため、ごく少数のチームが採用しています。 |
ひたいしょう(よく)き 【非対称(翼)機】 |
飛行機は「左右対称形」が大前提と言われていますが、ごく一部の研究者の間では左右の形状が対象でない飛行機が考案されました。これらの機体は、抵抗が発生する部分や、重量の分布を意図的に調節にすることで、飛行時は非対称形でも対称性を持つように設計されます。人力飛行機においてもユニークさを狙って一部のチームがこのタイプの機体を制作しています。 |
すいめんこうか 【水面効果】 |
飛行機が地面や水面のギリギリの高さを飛行すると、飛ぶことを妨げる力の一つ(誘導抗力)が減少し、飛行性能が向上する場合があります。一般的には「地面効果」と呼ばれますが、琵琶湖で行われる鳥人間コンテストでは「水面効果」と説明されます。滑空機が最初勢いよく水面に降りても、ギリギリのところで飛び続けるのはこれが一因であると考えることができます。 |
ラダー ・ エルロン 【rudder ・ aileron】 |
タイムトライアル部門では「旋回」が競技の“カギ”になりますが、その際操作するのがラダー(方向舵)もしくはエルロン(補助翼)と呼ばれる装置です。ラダーは垂直尾翼を左右に動かすことで機体の首を振り、自転車のハンドルを切るような役割を果たします。エルロンは主翼の一部を左翼と右翼で逆に上下させることで機体を左右に傾け、自転車をコーナーで内側に倒すような役割を果たします。実際の飛行機では両方の操作を組み合わせて旋回しますが、軽量化が要求される人力飛行機ではどちらか一方の装置を付けるのが基本で、製作が楽で安定性のあるラダーによる旋回を選択するチームが多くの割合を占めます。しかし、小回りで素早く旋回するにはエルロンの方が有利で、こちらを採用するチームもあります。 |
リカンベント ・ アップライト 【recumbent ・ upright】 |
人力プロペラ機はある意味「翼のついた自転車」と捉えることができます。特に、パイロットの乗り込むコックピットは自転車の部品が流用されることが多く、パイロットの操縦(漕ぎ)姿勢は通常の自転車のように直立に近い「アップライト」と仰向けに寝そべるようなスタイルの「リカンベント」に分類できます。どちらも本来は自転車の用語です。遠くからの見分け方は、コックピットが横長で流線型のようにスリムなものがリカンベント、やや縦長で箱型のようなものがアップライトであることが多いです。 |
▲リカンベントによく見られるコックピット |
▲アップライトによく見られるコックピット |
こうそくき ・ ていそくき 【高速機 ・ 低速機】 |
人力プロペラ機には高速機と低速機という便宜上の分類があり、特に比較的小型(翼の長さが30mに満たないくらい)で飛ぶ速さが8.0m/s(28km/h)程度のものが高速機と呼ばれることが多いです。タイムトライアル部門では当然有利ですが、飛び続けるには強靭なパワーが必要となり、試験飛行時に伴走するのも困難なため、飛行機を運用するのが難しいと言われています。 |
こうよくき ・ ていよくき 【高翼機 ・ 低翼機】
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高翼機はパイロットの頭よりも高い位置に主翼がある機体です。機体の持ち運びがしやすい上、ワイヤーを取り付けて翼の湾曲を抑えることができるなどのメリットから、人力プロペラ機はこの「高翼」タイプが圧倒的に多いです。対して、パイロットの頭よりも低い位置に主翼がある機体を低翼機といい、水面に翼が近くなるため水面効果が得られやすいと言われています。このため滑空機や一部の人力プロペラ機に採用されています。
これらの中間として、パイロットの頭から腰のあたりに翼が設置される機体を「中翼機」と区別する場合もあります。 |
▲高翼機 |
▲低翼機 |
フライ・バイ・ワイヤ 【fly-by-wire(FBW)】 |
人力飛行機はアナログな乗り物と思われがちですが、最近では操縦システムにコンピュータや電子回路を用いた機体が主流になりつつあります。これは「フライ・バイ・ワイヤ」と呼ばれ、ハイテク旅客機にも搭載されている仕組みです。パ
イロットが操縦桿を動かすと電気信号が舵に伝えられ、電気モーターが舵を動かします。人力飛行機は推進方式が人力であればよいので、このような部分にモーターを使うことはルール違反になりません。この他にも、光ファイバーで信号を伝達する「フライ・バイ・ライト」という形式があります。 |
ダイダロスがた 【-型】 |
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)がギリシャで人力飛行機最長飛行記録(115.11km)を達成して以来、このときに使われた機体のスタイル(前プロペラ、高翼、後尾翼、リカンベント)が日本の鳥人間チームでも主流となりました。このスタイルは、世界記録を達成した機体が「ダイダロス号」という名前だったことから「ダイダロス型」と呼ばれ、今でも人力プロペラ機で最も多くの割合を占めます。ちなみに、下記の「ふわり!」という作品に登場する機体も「ダイダロス型」です。 |
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